2009年2月23日月曜日

■2009年2月23日 雨降るあなたの誕生日に

雨が降る。雨は降る。しとしとと。しとしとと。

九年前の今日は、肌がつっぱるほど晴れていた。土曜日破水したのではないかという不安を抱えての月曜日の診察だった。土曜日には出なかった反応が出、私は即入院。入院が決まった途端、不思議なことに陣痛がやってきた。朝食も昼食も摂れていないまま私は陣痛にうなされた。水を飲んでもすべてベッドの上に吐き出した。痛くてカーテンに抱きついたら助産婦に怒られた。痛みにうなされながら、私はおかしなことを考えていた。
あぁこれが正常な痛みというものなのだな、と。半ば感動していた。
いくらリストカットを繰り返しても感じられなかった痛みがそこにはあった。切腹しようと試みたとき以上の圧迫がそこにはあった。
私の腹はパンパンに膨れ、悲鳴を上げていた。あぁこれが、本来の痛みというものだったと、私はつくづく思った。
そうして20時16分、彼女は産まれた。
娘よ、あなたは知らないだろう。私がどんな思いであなたをこの世に産み出したかなぞ。あのときどれほどの希望を私が得たかなぞ。そう、あなたはそんなこと、知る必要はない。ただ、懸命に今を生きればいい。今を精一杯味わい呼吸すれば、それで良い。
最近時折、街を往く家族連れとすれ違いざまに一抹の寂しさを覚えるようになった。私に父親はいたが、幼い頃不在であった。一方娘に今父親は不在だ。私たちの記憶の中に、ああした姿は共に不在なのかと、それが少し寂しい。
願わくば、おまえが無事に嫁ぎ、別れることなく誰かと共に在ってくれたら…などと、要らぬことを思い描いたりする私がいる。
でも。
今はそんなこと、まさしく余計なことだろう。
そう、今はただ言おう。
誕生日おめでとう。今年は一桁最後の年だよ。精一杯生きろ。
と。

雨が、止みかけている。

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