2004年2月23日月曜日

「ビリー・ジョーの大地」カレン・ヘス作、伊藤比呂美訳、理論社

 1934年、大恐慌の真っ只中を生きた14歳の少女の日記。日記というが、訳されたそれはまるで散文詩集のよう。だから読み進むほどに断片になって散らばる印象が、どくどくと沸き上がって来る。断片すぎてそれらは、すぐどれと繋がるのか迷うことさえある。複雑なジグソー・パズルのように一見見える。が、それが幾つか繋がった時、強烈な光が放たれる。

 「あたしたちの将来はカラカラに乾いて/土埃といっしょにどこかに飛んで行ってしまったことを知る」(P55)「うすやわらかな花びらが太陽の中で焦げてゆくのを/あたしは見ていられなかった」(P110)
「そして今/その悲しみは/階段をのぼりつめて、すぐそこまで近づいてきた。/テキサスぐらい大きくなって/まっすぐこっちに向かってきていたというのに/あたしたちはそれが目に入らなかったというのか」(P113)
「いっしょに/ならんで/土埃の中をぱふぱふ歩いてゆくにつれ/あたしは/あとのことぜんぶについて/自分自身をゆるしている。」(P269)
「今までずっと/この土埃から抜け出そうと必死だった。/でも現実は/土埃もあたしの一部だった。/土埃があるからあたしがいる。/そして、こんなありのままのあたしはとてもいい。/自分で見てもいいなと思える。」(P290)

 そうして散りばめられた言葉たちは、まるで彼女の命の煌きのように、こちらの胸を目を射るほどにきらきらと輝いている。

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