2004年2月19日木曜日

KEITH JARRETT & MICHALA PETRI / BACH SONATAS

KEITH JARRETT & MICHALA PETRI / BACH SONATAS
 ヨハン・セバスティアン・バッハ ソナタ/ミカラ・ペトリ(リコーダー)、キース・ジャレット(チェンバロ)

 このアルバムは、いつも行くレコード屋を二時間ぐらいうろうろしていて見つけたもの。私の場合、初めて買うものについては、たいてい直感で。このアルバムも、手に持った瞬間、買うということを決めていた。中身の吟味もせずに。
 家に戻って早速かけてみる。スピーカーから零れ落ちた最初のリコーダーの音。あのとき受けた衝撃は、今も忘れられない。

 天使の音だ。おかしな表現だと思うが、そう思った。まるで天空の果てからすぅっと地上に降りてきた、そんな音。澄みきったその音は、私の体を震わせるに十分だった。
 キース・ジャレットのチェンバロの音よりも何よりも、ミカラ・ペトリのこのリコーダーの音。今これを書きながらもこのアルバムを聴いているが、ちょっと油断すると、目の奥がじぃんとしてきて、視界が滲んでしまいそうな気配。
 音が音を紡ぎ、気配を紡ぎ、そうして高みへとまた昇ってゆく。この音の連なりは、天国へ続く階段を描いているかのように思える。
 ただ静かに目を閉じて、音にだけ体を、心を、預けていたい。そう思える。

 生きていると、いろんな音が聞こえる。音のない状態など、多分あり得ないほどに、この世界は音で溢れかえっている。
 そんな中にありながら、ぴんと、細い細い糸が張り詰めたような静けさを、このアルバムは思い出させてくれる。
 私にとって、かけがえのない、一枚。

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