2004年2月20日金曜日

mecano / descanso dominical メカーノ「スペインの玩具箱」

 学生の頃、部屋にラジオは必須だった。両親が寝静まったのを見計らって、スイッチを入れ、耳をそばだてなきゃ聞こえないようなボリュームで、毎夜毎夜聴いた。中学一年生だったか二年生だったか、社会科の宿題で「始皇帝」について調べて来いと言われた夜もラジオを聴いていて、いきなり「がはははは」と豪快に笑う中島みゆきのオールナイトニッポンの音に、椅子から飛びあがらんほど驚いたりもした。

 この歌も、最初はラジオで耳にした。誰が紹介していた歌だったかは覚えていない。でも、歌が流れ始めてすぐに、私はこの歌手名と曲名をメモした。それは、スペインのメカーノというグループの、「マドリッドにひとり」だった。
 当時、輸入盤という代物をまだ知らなくて、私は毎日のようにあちこちのレコード屋を回ったが、メカーノなんてグループのアルバムは何処にもなかった。でも諦められない。探して探して。そうしているうちに三年の時間を経ていた。
 あった! 見つけた時は夢かと思った。当然レジに走り、その勢いのまま家に帰り、私はそのアルバムをかけた。
 ボーカルの、水彩絵の具を思わせるような透明度を持ちながらしっかり芯の在るその声色、その後ろで奏でられる、曲毎に跳ねたり澱んだり怒涛のように流れ去ったりする音たち。スペイン語をまともに聴いたのは、私にはそれが初めてだった。でも、知らない言語なのだけれども、そんなのは飛び越して、すこんと私の心の中に落ちてきた。
 何度も繰り返し聴くうち、スペイン語が知りたくなって、全く知りもしないのに辞書を買った。四苦八苦しながら辞書をひき、訳詞を読み、一曲だけでも歌えるようになりたいと思ったりもした。
 決して押しつけることもなく、ふわっと浮いた風船みたいに心地よく、今も私は時折々にこのアルバムを聴く。そうするとなんだか、ふんふんと鼻歌を歌いたくなってくるから、アルバムを聴き終えた後私の周りには鼻歌が広がる。家事をしながら、原稿を書きながら、日記を記しながら、ふんふんふん、と、好き勝手なメロディで鼻歌を歌う。歌ってこんなふうに、心のしこりを軽くしてくれるものだったよのね、なんて、一人勝手に口元を緩めてみたりする。

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