2008年11月3日月曜日

■もうすぐだ。私の愛する真冬はもうすぐ

 いつ雨が降り出してもおかしくないような雲模様が朝からずっと続いている。こんな日は空が低すぎて、息をするのが少し苦しくなる。誰にも見つからないように、誰にも知られぬようにこっそり息をしないといけないかのような錯覚に囚われる。だから私は今日少し窒息気味だ。
 朝、仕事絡みで話をした人からヒントを得て、私はあれやこれや自分の写真を引っ張り出す。昔のものと今のものを見比べてみたり、どうしても納得いかなければ焼き直してみたり。そして写真の出来上がりに葛藤する。
 文章でも写真でも音楽でも、簡潔・明瞭がいい。ただ、私は削ぎ落としすぎる。削ぎ落としすぎて、余白ができる。その余白が本体を映えさせ得るときと、逆に本体を潰すときとがあることを、私はすっかり失念していた。そのことを痛感させられる。当たり前だが、何でも削ぎ落とせばいいというわけではないのだ。そうなったら、一度、基本に立ち返る必要があるのかもしれない。写真で言えばそう、私が削ぎ落としてきた中間の部分を、中間の部分そのままに残しておくことも、大事なのかもしれない。

 洗濯物を干そうと窓を開けて気付いた。ラナンキュラスの芽が開いている。それはまだまだ小さな小さな葉体だ。まるで赤子がその小さな手を空に向かって精一杯伸ばし広げているかのよう。右の人差し指でそっと、輪郭を撫でてみる。葉がぷるりと震える。あぁこんな時、太陽がさんさんと照っていれば。私は低く垂れ込める空を見上げ、葉と同じようにぷるりと肩を震わす。
 でも。

 もうすぐだ。私の愛する真冬はもうすぐ、やって来る。そしてこの球根や裸樹と共にきっとこの冬も私は越えてゆく。

0 件のコメント: