かつて私の母は服飾デザイナーだった。家にはデザイン画や布、ボタンなどがいつでも山ほど積まれていた。
そんな母は、子どもの私の服を全部自らデザインして作った。ワンピース、ズボン、スカート、シャツ、何もかも。だから私の洋服ダンスには、基本的に店から買ってきた洋服は存在しなかった。どれもこれも、母手作りの服だった。
小学校時代、引越しを多く体験した私は、引っ越すたびいじめにあった。そして、何処に行っても最後につつかれるのが、母の服、だった。
「なんだそのダサい服」
「きもわるー」
「だっさーい」
「汚いからこっちに寄るな!近寄るなよ!」
「変な奴には変な服がよく似合うんだな」
徹底的にこけにされた。果ては、私の服をひっぱり脱がせ、それを校庭の真ん中にわざと放る生徒もいた。
最初は、母の作ってくれた服に悪口を言うな、と突っ張っていた私だったが、何処へ行っても同じ襲撃に遭うことに、だんだん疲れていった。やがて。
やがて私は、母の手作りの服を着ているから自分はよりいじめられるのだ、と思い込むようになっていった。
そして或る日。私は母に言った。
「もうママの作った服、着たくない」
(続く)
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