2008年11月7日金曜日

■懐かしく切ない匂いが重なってゆく

 父母の家から帰宅したばかりの娘の身体からは、もう遠い昔、嗅ぎ慣れた祖母を思い出させる匂いがする。
多分これは、今の父母の匂いなのだ。
もうそんな、歳になったのだ、父母も。
いや。
祖母は私が中学二年のときに死んでしまった。祖母はまだ七十に手の届かない歳だった。
もう父はその祖母の歳を越え、母もその歳に近づいている。
だから本当は、祖母よりも父母の方が年老いているといってもいい。
三十と少しから癌を患い続けた祖母よりも。

でもどう見ても、数少ない写真の中の祖母の顔と母の顔をどう重ね合わせてみても、母の方が若く見えてしまう。それはきっと私が母の年齢を軽く見ているからなんだろう。

生きているうちに親孝行を。

そんなことを常々思う。
しかし現実には、実家へと娘を行き来させるのが精一杯だったりする。
でも。

父も母ももう年老いた。
あと僅かしか時間は残されていないのだ。
そのことを、
日毎に色濃くなるこの匂いが、私に教える。

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