2008年11月11日火曜日

■さぁ気分を切り替えて

 久しぶりに用事があってみなとの方へ。高架下をくぐるとまっすぐに海へとのびる銀杏並木の通りに出る。あぁここはだいぶ色づいている。黄金色とまではいかないけれども、ほぼ全体が黄色に輝いている。そこだけぽっと灯りがついたかのよう。そういえば銀杏の匂いはもうない。そういう季節なのか。
 家を出てくる前、二年前の日記帳をふと開いて読んでみた。いたるところに、自分を傷つけている記述が残っていた。そうか、二年前はまだまだ破壊的行為の真っ只中に私はいたのだな。たった二年、されど二年、そう、大きな二年だ。
 そして、樹は変わらずそこに在った。二年前も今も。もう少し自転車でまっすぐ走れば、右手にモミジフウの樹が。クリスマスの時期には娘を連れてその実を拾いに来よう。今年は幾つの実を拾い集めることができるだろう。
 用事を済ませた帰り道、ふと公園に立ち寄る。この公園には池がある。行ってみると、鳩が水辺でごろりと横になっているところだった。向こう岸に猫がいるというのに、呑気な光景だ。
 池は重たげな雲を映しているせいか、海松色と苔色を静かに混ぜたような色合いをしている。澄んだ水面には葉を落とした桜の枝々の姿がくっきりと映っている。ふみゃぁという声に驚いて振り返ると、半野良猫が餌欲しさに数匹集まって来ている。あぁ、ごめん、私はごはん持っていないのよ。声に出して言ってみるが、彼らには全然通じない。何も持っていない手をぱらぱらと振ってみせる。すると、がっかりしたような表情をして彼らは立ち去る。ここには猫おばさんが定期的に通ってきて餌を遣るから、多分、その人の友達とでも思ったのだろう。時計を見る。やっぱり。猫おばさんがそろそろやってくる時間だ。
 私は立ち上がり、自転車に乗り直す。それにしても今日は寒い。このまま冬に突入するのだろうか。それともあと一度くらい暖かさを戻す日があるのだろうか。
 そうだ。家に帰ったら、パン作りをしよう。明日の朝食は久々に手作りパンで。じゃぁ夕飯は? 確か昨日のスープの残りがあったはず。
 みゃぉ。猫の鳴き声に振り返る。でも、姿は見えない。多分つつじの藪の中に隠れているのだろう。おまえたちの待ち人はきっともうすぐやってくるよ。じゃぁね、ばいばい。
 私は心の中でそう言い、ペダルを漕ぎ始める。家まではあと約五分。さぁ気分を切り替えて。俯きがちなときほど視点を変えてみること。何事も視点を変えれば、新しい側面が見えてくる。

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