2008年11月6日木曜日

■今一度並木道を振り返り、

写真展を今催している喫茶店の、最寄の駅を南に降りると、それは見事な銀杏並木がまっすぐ南へ伸びている。時期が来れば毎年、すっぽりと黄金色に色づいて、並木道を歩くと、それを眺める私たちは一寸した異世界へ誘われる。けれど今年、その色づきが非常に遅い。まるで色づくことを樹たちが忘れてしまったかのように、いまだ青々とした葉を茂らせている。季節と季節の、見えない境界線が少しずつ、歪んでいっているようで、私は一抹の切なさを覚える。

会場で誰かしらと会い、作品を挟んで話をする。この時の幸福感を言葉で表すのは難しい。たとえそれが作品の批判であっても、それらはいずれすべて、私の次の制作の原動力となる。
今日も数人の人との出会いを得ることができた。この時間を私にくれたすべてのものに、感謝を。

今頃娘は学童に向かっている時間だろう。私は写真の前にこうしていながら、娘のその姿を想像する。今日は幼稚園の子供たちに紙芝居を見せに行く日でもあった。無事成功したのだろうか。終わりの挨拶もちゃんとできただろうか。今から彼女の報告を聞くのが楽しみでならない。

帰り道。もうすっかり黄昏れた空。今一度並木道を振り返る。濃紺色の影々は今何を想う。そうだ、近いうちにまた樹を抱きに行こう。そして耳をそっと寄せて、あの何ともいえない内奥から沸き立つ音を聴くんだ。

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